多種性の強いラーメンは、その味や方向性はお店ごとに千差万別であり、これというレシピも提示しづらいものです。そこで、ここでは「和風だしの考え方」に焦点を絞って解説いたします。 ラーメン用和風だしの考え方


和食用だしやそばうどんだしの場合、おおよその目安となるレシピが提示されていますが、ラーメンの場合、非常に多種多様なものに進化を続けているために、その味や方向性によってレシピはお店ごとに全く異なるものになります。そのため「ラーメン用和風だし」といっても、これというレシピを提示することが非常に難しいものがあります。

そこで、ここではラーメン用和風だしを作るうえでの考え方にポイントを絞って、ごく簡単にですが解説を致します。ご参考にしていただければ幸いです。

 
・最終的にどんな味のラーメンにするのかイメージする

まず重要なのが、最終的な味のイメージをしっかりと持つことです。たとえば、同じ和風ラーメンでも、動物性も和風も両方強い和風とんこつと、魚介の風味を活かしたあっさり塩ラーメンでは、全く別物です。「とりあえず和風だしを使おう」などと曖昧なイメージしかないと、レシピが固まるまでに時間や労力が余計にかかってしまいます。また、動物性スープやタレの作り方やバランスによって、最終的な味は大きくかわってくるものです。

まずはどんな味に仕上げたいのかを明確にイメージし、そのイメージに近づけるためにはどんなだしにしていったらよいのかと考えていく方が、よりスムーズにレシピを組み立てることができるはずです。



・和風だしの「濃度」をイメージする

和風だしは、同じ味でも、どのくらいの「濃度」をもたせるか、どれだけ主張させるかによって、味の最終形は大きく異なってきます。先述のように、味の強い和風とんこつとあっさり塩ラーメンでは、和風だしに求められる濃度が大きくことなるものです。動物性スープが強い場合、それにあわせた時でも和風が主張してくるだしにするためには、かなりの濃度が求められます。また、だしの種類としても、あっさりとしたものではなく、あえて魚っぽさやエグ味の強い素材を使ってだしを取った方が、動物性スープと合わせたときにバランスが取りやすい、という場合もあります。一方、あっさり風味のラーメンでは、それほど和風だしの濃度は求められないか、もしくは濃度をあげるにしても臭みや雑味の出にくい上品な素材を使っていく方が、バランスが取りやすいかもしれません。

和風だしの濃度と動物性スープとの割合は、お店によって千差万別で目安も提示しづらいのですが、仮に和風とんこつのような「動物性も和風もかなり強めに出す」ようなスープの場合、水に対して10%の投入量で和風だしを取り、これと動物性のスープを同割で試してみて、味を見ながら投入量もしくは割合の調整を進めていく方法が良いかと思われます。



・和風だしの「味と風味」をイメージする

ひとくちに「和風」といっても、素材の種類や品質によってだしの出方は全く異なりますので、素材の選択は非常に重要です。素材ごとの違いは、実際にだしをとってみないと分からない部分が多いのですが、参考までに種類ごとにどんなイメージの味が出るのかを表にまとめてみました。


加工法による違い カビ付節(枯節)各種 上品でまろやかな風味で、クセの少ないだし口になります。そのため、魚介の風味が前面に出て強く主張してくるというよりは、上品に旨味を支えるといったイメージです。
荒節(裸節)各種 魚っぽさに近いコクのあるだし口になります。枯節に比べると臭みやエグ味も出やすいのですが、魚介の風味が前面に出てくる強さとコクがあることから、ラーメン用だしとしては広く使用されています。
煮干類 ラーメン用だしとして最も一般的に使用されているもので、鰹節よりもさらに魚っぽさの強いだし・風味になります。
昆布類 スープにまろやかさをもたらします。また、鰹節類の主たる旨味成分である「イノシン酸」とは異なり「グルタミン酸」による旨味成分が出るため、鰹節類と併用することで、深みのある旨味を狙うことが出来ます。
その他の素材 この他に、和風だしの素材として、干し椎茸、干し貝柱、干しエビなどがあげられます。それぞれ、節類・昆布とは異なる風味・旨味を持つため、味に深みを与える効果を期待できます。

品質による違い 魚質(脂肪分) 脂肪分が少ないほど上品でクセの少ないだしに、多いほどコクが強く魚っぽいだしになります。一般的には脂肪分が少ない方が「高価で上質な」ものですが、ラーメンだしの場合、安価なものであえて強い魚介っぽさを狙うケースも多くあるため、値段ではなく、あくまでも味で判断していくべきでしょう。
枯具合(乾燥度) カビ付節(枯節)、とくに本節の場合、どれだけ枯れ(乾燥)を進ませて熟成させるかもポイントとであり、十分に枯れている節ほど上品でクセが少ないだしが取れます。

魚種による違い(節類) 本鰹(本節) いわゆる鰹節っぽい香りが一番強いのがこの本鰹で、コクはそれほど強くありませんが、香り高くすっきりとした風味のだしがとれます。なお、亀節は同じマガツオから作られる節ですので、基本的な味の特性はほぼ同じです。
宗田(目近) コクは、本鰹とサバのちょうど中間くらいのイメージで、渋みに近い独特なアクセントのあるだしがとれるのが特徴です。関西では「目近(めじか)節」とも呼ばれています(宗田節と目近節は、呼び名が違うだけで同じものを指します)。
サバ コクと甘みの強いだしが特徴です。魚っぽい臭みが出やすい面もあるのですが、ラーメンスープではコク出しとしてよく使用されてます。とくに動物性も強い和風ラーメンなどでは、サバと煮干を組み合わせて、強烈な魚介っぽさを出す手法がよく使われています。
ムロ(ムロアジ) 風味はサバにやや似てますが、独特の甘みとコクのあるだしが特徴です。主にコク出しを目的として使われることの多いものですが、サバよりもややあっさりとしています。
ウルメ 煮干の原料としても使われるウルメイワシを加工したもので、味も煮干っぽさの強い節です。燻してある分、ウルメ煮干よりも香ばしさがあるだしになります。
マグロ(シビ、メジ) 本鰹よりもさらにあっさりとした風味が持ち味で、だしの色も薄いことから、とくに和食向けのだしとしてよく使用されているものです。そのため、ラーメン用としてはあまり一般的ではないのですが、その上品さを狙って使用されることもあります。

魚種による違い(煮干) 片口 カタクチイワシを原料とした最も一般的で生産量も多い煮干で、いわゆる煮干っぽさが一番強いのがこの片口です。大型のタイプほど脂が乗りやすいため強めのだしに、小型のものほどあっさりとした上品な味わいになります。
ウルメ ウルメイワシを原料とし、片口よりもあっさりとしていてクセの少ないだしになります。先述のように節加工されて、ウルメ節として流通するものもあります。
アジ アジを加工した煮干で、甘みのあるあっさりとしただしが取れるのが特徴です。
平子(マイワシ) マイワシを加工した煮干で、ややあっさりした味わいの煮干ですが、現在マイワシが数十年周期とも言われる不漁期にあるため、生産量は激減しています。
アゴ(トビウオ) トビウオを原料とする煮干で、独特の甘みのあるだしが取れます。素材としての珍しさもあり、ラーメン用としても人気のあるものです。一部、焼き加工される「焼アゴ」も流通しています。
サンマ サンマを加工した煮干で、節加工されたサンマ節もあります。脂肪がのりやすい傾向にありますが、味自体は淡白です。


ポイントとなるのは、魚種による違いに加えて、加工方法による違いと、品質の違いです。ごく大雑把に言ってしまうと、上質なものほどクセは少なく上品な味わいに、安価なものほどコクや魚っぽさの強いだしになります。ただし、高価なものだから良いというわけではありませんし、安いから良くないというわけでもありません。「鰹節の質とは?」でも触れていますが、最終的に重要なのは「理想のイメージにどれだけ近い味が出るか」であり、価格の問題ではありません。こと、動物性スープと合わせるラーメンだしの場合、コクや(臭みに近いくらいの)魚っぽさが強い安価なものの方が、むしろ合うケースも多々あります。

一方、最近では上質な枯節を使用して、あえて表に主張してくる風味ではなく、鰹節本来の旨味をしっかりと出してスープの味わいを支えるようなだしを取るお店もあったりと、だしに対する考え方は非常に多種多様です。ぜひ、先入観を持たずにいろいろとお試しいただいて、理想の味に近づけていっていただければと存じます。
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